JR田町駅からほど近いビルの中に、ダンス界では知る人ぞ知るスタジオがある。スタジオアーキタンツは、ダンススタジオと建築事務所を兼ねる異色の存在だ。代表を務める建築家の福田友一さんに話を聞いた。
っかけは香港のダンサーの舞台美術を建築仲間4人で担当したこと。これが国際的にも高い評価を受け、建築家として独立する2001年にダンススタジオを同時にオープンした。当初は小さなビルのワンフロアだったが、口コミで評判が広がり手狭になったことから今の場所に移転。現在は3つのスタジオを備えている。

入門から上級まで、終日レッスンが行われているスタジオ。クラシックバレエだけでなく、コンテンポラリーダンスや能などのクラスも開催される。

 タジオアーキタンツがユニークなところは、ほとんどのスタジオが会員制をとる中で、会員制ではなく予約もいらないこと。入門から上級まで毎日さまざまなクラスが開催され、いつでも好きなクラスに参加することができる。「もともとダンス界の人間ではないので、どちらかというと閉鎖的なダンスの世界を変えたかった」と福田さんは語る。
た国内外から世界トップクラスの講師を招いてレッスンを行っている。スタジオ開設当初から外国人の招聘講師を中心にレッスンを行い、現在では世界中にダンサーのネットワークがある。「こちらからお願いしなくても『アーキタンツでレッスンを開催したい』という外国人講師が多数います」と福田さん。

マイケル・シャノン ※
タチアナ・コズロバ ※
イ・ソン ※
世界的に著名なバレエダンサー、シルヴィ・ギエムのサインも壁に残る。

うした試みが評判を呼び、現在では1日に150人、週末には200人がレッスンを受けに来る。プロのダンサーも利用しており、都合のいい時間にトレーニングできることから「アーキタンツがあってありがたい」と言ってもらえるとか。ダンスは1日でもレッスンを休むと身体の感覚が変わってしまうのだ。
本では子どもの習い事にバレエなどが人気だが、実際にダンスで食べていける人は多くない。もっとダンスの文化を根付かせたいと、アーキタンツでは数年ごとに世界的ダンサーの公演を行ってきた。開設20周年の2020年には、新宿文化センターで大きな公演を予定している。また来年からジュニアダンサーを対象としたトレーニング・プログラムを実施する。通常は体験できない海外の一流講師によるレッスンになる予定だ。
見、何のつながりもない建築とダンスだが、福田さんは「どちらも同じ芸術の一部。いいものを提供して初めて続けていくことができる」と言う。会社名のアーキタンツは、英語の「Architecture=建築」とドイツ語の「Tanz=ダンス」を組み合わせた造語、そして会社のロゴはコンパスが踊っている図だ。

アーキタンツの活動を象徴するような、コンパスが踊っているロゴ。
バックヤードではダンスに関わるスタッフと、建築に携わるスタッフが一緒に働いている。
 

Profile
福田友一
 
株式会社アーキタンツ代表、建築家。芝浦工業大学卒業。2001年より一級建築士事務所とダンススタジオを併設した会社を運営。昔から能や狂言などの舞台が好きで、趣味で書や能をたしなむ。また自分でリノベーションした事務所の一角には茶室も備えている。
ARCHITANZ(アーキタンツ)


 

Q:福田さんのお気に入りの空間は?

昔から運河のある芝浦を拠点にしていることもあり、水に近い場所が好きですね。いちばん気持ちが落ち着くのは芝浦にある自宅。すぐ裏手には東京湾が面しており、東京タワーも目の前に見ることができます。

聞き手・千葉基 文・湯浅玲子 
撮影・Nacása & Partners Inc. 以外)