HOME | コラム集 | パリ通信 | ギリシャ・アテネ郊外「スタヴロス・ニアルコス 財団文化センター(SNFCC)」 (設計:レンゾ・ピアノ)

ギリシャ・アテネ郊外「スタヴロス・ニアルコス財団文化センター(SNFCC)」
(設計:レンゾ・ピアノ)

世界の現代建築を訪ねる旅 ‐14

タヴロス・ニアルコス財団文化センター(Stavros Niarchos Foundation Cultural Center)は、アテネの中心から南西の海側に10㌔ほど離れた丘の上にある複合文化施設で、アテネからはメトロが直行しています。ギリシャの海運王の一人、スタヴロス・ニアルコスの私財を基にした財団によって運営されています。

全体が20㌶にも及ぶ大きな公園になっていて、その中心に、レンゾ・ピアノが設計し、2016年に竣工した現代建築が建てられています。この建物は、レンゾ・ピアノらしいガラスと金属素材を多用し、三次元座標軸のような、直線的な造形が特徴になっています。特に屋根の部分の、大きな方形の構造が印象的です。 屋根のすぐ下は展望台になっていて、素晴らしい景色が展開しています。そこからは、アテネ中心のアクロポリスの丘の上にあるパルテノン神殿やリカヴィトスの丘、そして反対側にはエーゲ海が手に取るように眺められます。
 また建物の床面にあたる部分は傾斜した構造で、庭園の傾斜の延長になっています。これはレンゾ・ピアノがこの建築に対して最も重視したという周囲の眺望を劇的に演出したものだそうです。

国立図書館内中央にある3階分の吹き抜けと階段。
傾斜した建物の床に続く、公園の丘の斜面を見通す眺望。
アクロポリスの丘のパルテノン神殿と、リカヴィトスの丘。

物内部には、国立オペラハウスと国立図書館が常設されています。
 図書館は蔵書数100万冊という素晴らしい規模のもので、誰でも入ることができます。地上3階、地下2階に広がる巨大な図書館です。中央は高々とした吹き抜けの広大な空間となっています。地上2階には絵画展を行うギャラリーがあります。今回訪問した時も、大勢の地元の若者たちが読書したり、勉強したりしていました。
 また、オペラハウスの内部は、壁面と座席の色を深紅とし、伝統と革新をバランス良く採用した素晴らしいデザインになっています。

フロアにあるゆったりとしたソファ。
SNFCCでは、野外コンサートや映画を含む、さまざまな文化イベントやフェスティバルが開催されています。また公園やメインの建物の屋根上にはソーラーパネルが置かれ、施設の電源を自給するなど環境への配慮がされています。公園の芝生や植物に与える水は雨水を利用し、建物の前にある長大な運河の水は海水を導入しているそうです。この運河の北東の端には広々としたカフェがあってちょっとした食事をすることもできます。
SNFCCにある国立オペラハウス。
公園の丘の上に建つSNFCC。

回アテネには5月下旬に行きましたが、既に日中は真夏の空気でした。でも、朝晩は気温が下がってとても快適でした。アテネの盛夏は日中気温が40℃を越えてパルテノン神殿も閉鎖されてしまう有様なので、あまりお勧めできません。真夏を避けてお出かけになることをお勧めします。

SNFCCの前に広がる運河。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)