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パリ・オリンピック会場の建築

世界の現代建築を訪ねる旅 ‐13

いよいよ2024パリ・オリンピックが7月26日(金)に開会式を迎えます。そこでオリンピックが行われる会場を、開催100日前となる、4月の時点で取材してみました。

回の会場は次の3つのカテゴリーに分けられます。
既存施設に仮設スタンドを設置
新たに施設を建設
既存施設をそのまま利用

新築されたArena Porte de la Chapelle (バドミントンなど)。
1の施設としては、まず開会式が予定されている会場が挙げられます。今回の開会式は従来型のスタジアム内での開催ではなく、セーヌ河を多数の船に乗った選手たちが下り、パリ市全体を舞台とする、ユニークな演出となります。選手団はエッフェル塔の対岸シャイヨ宮の前で下船して集合します。
 コンコルド広場では、新種目のブレイキンやスケートボードなど日本選手の活躍が期待されている
2種目が開催予定。仮設スタンドが作られ、オリンピックの後は原状回復されます。
 エッフェル塔がそびえるシャン・ド・マルス広場のほぼ中央には、 Stade Tour Eiffel(エッフェル塔スタジアム の仮設スタンドが建設中です。ここでは、ビーチバレーの競技が行われます。
コンコルド広場( Place de la Concorde)の仮設スタンド(ブレイキン、スケートボードなど)。
開会式会場となるシャイヨ宮( Palais de Chaillot)前広場。

2の新施設は、パリ市内に一箇所、パリ近郊に一箇所あるのみです。市内では、北部のArena Porte de la Chapelle(ラ・シャペル・アリーナがすでに完成しており、バドミントンなどの開催が予定されています。近郊ではサン・ドニ市にあるStade de France(フランス・スタジアムに併設してCentre Aquatique(アクアティックセンターを新設。ここではシンクロ、飛び込みなどが開催されます。

新築されたサン・ドニ市の Centre Aquatique(シンクロ、飛び込みなど)。

の他の多くの競技会場は、3の形で開催されます。陸上競技は、サン・ドニ市のStade de France(フランス・スタジアムで行われます。1998年サッカーのワールドカップの際に新設され、その後世界陸上やラグビーワールドカップなどに使われた、実績の豊かな施設です。
 また競泳の会場には、2017年に新設された、デファンス地区にあるParis la Défence Arena(ラ・デファンス・アリーナが使用されます。こちらもラグビーワールドカップの会場として使用された実績があります。このシリーズでも以前に取り上げたことのある、美しい建築です。
 ほかにも多数の既存施設が使用される予定です。例えば、毎年恒例の農業祭が行われるPorte de Versailles(ポルト・ド・ヴェルサイユ内の見本市会場Arena Paris Sud(パリ南アリーナでは卓球やバレーボールの競技が行われます。Grand Palais(グラン・パレではフェンシングなど、Arena Champ de Mars(シャン・ド・マルス・アリーナでは柔道やレスリングが予定されています。

見本市会場をそのまま使う Arena Paris Sud(卓球、バレーボールなど)。

のように今回のパリ・オリンピックでは、新設の大きな建築はほとんど無く、仮設スタンドや既存施設の利用がメインで、それだけコストが縮減された計画になっています。いよいよ7月からの開催、日本人選手をはじめとした活躍に期待が高まります。 

Stade Tour Eiffel の仮設スタンド(ビーチバレー)。
陸上競技のメイン会場Stade de France
Grand Palais (フェンシングなど)。
Arena Champ de Mars (柔道、レスリング)。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)