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南フランス 南仏ニーム「カレ・ダール」
(設計:ノーマン・フォスター)

世界の現代建築を訪ねる旅 ‐12

フランスにあるニーム市(Nîmes)は、古代ローマ都市が起源となっていることもあり、今日でも円形闘技場をはじめとしたローマ遺跡が残っています。なかでも、ローマ時代の神殿だった「方形の家」(=メゾン・カレ Maison carrée)は、この種のローマ遺跡としては、世界で最も保存状態が良いと言われています。
 このメゾン・カレのある広場に、1993年、カレ・ダール(Carré d’Art)が建てられました。この建物には、ニーム市が管理する市立図書館と現代アート美術館が入っています。カレ・ダールは、全体がガラス張りで、それを支えるジュラルミンの骨組みが銀色の光を放つ現代建築です。それは、二千年の月日を隔てた総大理石造りのメゾン・カレと好対照を成しています。カレ・ダールは、メゾン・カレの存在を意識し、その構造を継承した長方形に造られ、古代のポルチコ(玄関ポーチ)や円柱群を模倣しています。

メゾン・カレ広場北側から見た、カレ・ダール正面。ローマ建築を模したポルチコと列柱構造が窺える。

の建物を設計したのは、英国のプリツカー賞受賞(1999年)建築家である、ノーマン・フォスター(Norman Foster)です。このシリーズでもこれまでに、同氏が設計した、南仏ミヨーの大橋、ガーキン(ロンドンの金融街シティにあるオフィスビル)、大英博物館のグレート・コートを取り上げました。

カレ・ダール地下 1階部分に掘り下げられた図書館。窓外に見えるメゾン・カレ。
上層階にある、展示物が見渡せる、カレ・ ダール内の美術館。

レ・ダールは地上4階、地下2階建てで、地下から地上2階までが図書館、3階と4階が美術館とレストランになっています。全館がガラスで覆われているため、内部のどこにいても他の階を見渡すことができ、美術館の絵さえ、美術館の中に入らなくても外から眺められるという、ユニークな構造になっています。地下にある図書館部分は、地上から掘り下げた構造になっているため、外部の光が到達して、とても開放的な雰囲気が溢れています。私が訪問した時は、図書館に若い世代が大勢集まっていて、この施設が市民の間によく利用されている様子がうかがえました。

カレ・ダールのエントランスから見上げるガラス張りの天井。

各階が見渡せる、カレ・ダール内部の構造。

が今回こちらを訪問したのは、ちょうどクリスマス・シーズンでしたので、街はクリスマス・イルミネーションに飾られて、とても華やいだ雰囲気が溢れていました。この日、日没後に行われたパレードは、カレ・ダールを起点として、円形闘技場に向かっていました。沿道には子ども連れを中心に大勢の市民が繰り出していました。
カレ・ダールの図書館部分は無料で開放されています。南仏ご旅行の折には、ぜひお寄りになってはいかがでしょうか。

ライトアップされたメゾン・カレ。

文・写真/佐藤文子(パリ在住)