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ラ・デファンスの新風景「トゥール・エクラ」ほか
(設計:ジャン・ヌーヴェル ほか)

世界の現代建築を訪ねる旅

黒水晶の結晶を思わせるトゥール・エクラの外観。

リ西部にあるラ・デファンス(La Défence)地区は、歴史的建造物が多いその他の地区とは対照的に、現代的な高層建築が主体となっている地区として知られています。
ラ・デファンスでは1970年代から高層建築が建てられ始め、概ね半世紀の歴史を持っています。当初より世界のほかの都市同様、新しい建物の建築に対する議論が起こり、特に批判的な意見としては〝建物が異様に高いコンクリート・ジャングルで、非人間的な街だ〟とするものがあります。確かに20世紀の高層建築の多くは、直線的な箱型の味気無い建物が主流で、鑑賞されるものとして芸術的な要素を持った建築物が少なかったように思います。

の中で、1989年竣工のグランド・アルシュ(新凱旋門)や、1995年竣工のソシエテ・ジェネラル銀行本社ビルなどの、特徴的な外観の建築が現れ始めました。21世紀に入ると、新しく建築あるいは改装されたビルたちは、外観・形状が個性豊かなものが多くなります。その結果、ラ・デファンスは、わざわざビル・ウォッチングをするために散歩に行くのが楽しく感じられるような街へと変化してきました。現在この地区で最も高さのある、2011年に改装されたトゥール・ファーストや、2014年竣工のトゥール・マジュンガも、そのようなビルとして挙げられます。
今、ラ・デファンスは、パリ外郭部の再開発の中心的な拠点として位置づけられ、メトロの新線の建設や新たな高層ビルの建築が進行中です。これまでは少なかった200㍍を越えるビルが、数年内に少なくとも4棟は出現する予定になっています。

ラ・デファンスの象徴的存在、グランド・アルシュ。(新凱旋門)
2014年竣工、高さ 194mのトゥール・マジュンガ。
1995年竣工、高さ 167mのソシエテ・ジェネラル銀行ビル。
2011年改装、高さ 231mのトゥール・ファースト。

さ220㍍、51階建てとなるトゥール・エクラ(La Tour Hekla etc.,)もそのひとつ。建物本体はほぼ完成済みで、本年中の竣工を目指して、最終段階の工事が進められています。主要用途はオフィスとなる予定です。
トゥール・エクラの設計は、フランスの代表的な、プリツカー賞受賞(2008年)建築家のジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)
この建物は、ラ・デファンスの南西部分のピュトー(Puteaux)地区にあります。外面は、ほぼ全てがガラス張りになっているにもかかわらず、黒水晶の結晶を思わせる黒々とした印象を受けます。それは、外面全体が細い線状の鋼材で覆われており、それらが作る陰が影響しているようです。外壁の構成は三角形が複雑に組み合わされており、時にはそれらがオーバーハングしていて、見る者に非常に強いインパクトを与えます。

トゥール・エクラの外装工事の様子。

・デファンスは、パリの中心部からメトロ1番線あるいはRERのA線で簡単に行くことができます。パリでの新感覚の観光として、ラ・デファンスの最新ビル群が作り出す都市景観を鑑賞されてみてはいかがでしょうか。

ビルの合間に見えるトゥール・エクラ。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)