パリ「パレ・ド・トーキョー」
(改修設計:ラカトン&ヴァッサル)
パリ市西部にあるトロカデロの丘のすぐ近く、エッフェル塔を間近に見るセーヌ河畔の、パリ16区と8区の接点となる場所にパレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)の建物があります。この辺りはパリの中でもひときわエレガントな地区になっています。周りには、シャイヨ宮、ギメ美術館、ガリエラ宮・モード美術館、セーヌ河対岸のケ・ブランリ美術館など、パリでも有数の美術館が多数集中。それらの歴史的建造物や庭園、そして見え隠れするエッフェル塔の景観が、魅力ある街並みを作っています。
建物に日本の“東京”の名が付いたいわれは、1918年に建物のセーヌ河側の道が「東京通り」と名付けられたことに始まります。1945年に「東京通り」は「ニューヨーク通り」に改称されてしまいますが、建物の名前は改称されず、「トーキョー」の名が保たれました。
パレ・ド・トーキョーは東翼と西翼の2つの建物から成り、現在、東翼に「パリ市立近代美術館」、西翼に「現代創造サイト」が入っています。
当初の建物は1937年に落成。外観はその当時のものがそのまま残されています。中心部に配置された列柱からは、ギリシャ神殿が思い起されます。セーヌ河側は、大きな広場と彫刻が施されていて、迫力のある外観を見せています。
22012年には、フランスの建築家であるアンヌ・ラカトン(AnneLacaton)とジャン=フィリップ・ヴァッサル(Jean-PhilippeVassal)が、パレ・ド・トーキョーの改修を手がけました。
2人は2021年のプリツカー賞を受賞。フランス人としてはポルザンパルク、ヌーヴェルに次ぐ3組目の同賞受賞となっています。彼らの作品には、あまり外見の派手なものは見当たらず、逆に居住性などの実用面と、環境対応、経済性に重きを置いたものが主力になっているようです。昨年の受賞に際しては、そのあたりの特徴が高く評価されたようです。
さて、パレ・ド・トーキョーの建物の中に入ってみると、高い天井がコンクリートの剥き出しの面であったり、鉄骨構造が剥き出しになっていたり、天井部の思いがけない場所にガラス窓が設えてあったりして、2人の建築の特徴が感じられます。
展示は現代アートの幅広いジャンルから成り、常に企画展が多数行われています。深夜12時まで開館しており、カフェ、レストラン、書店なども充実していてゆっくりとした時間が楽しめそうです。