南フランス・アルル市「ルマ・アルル」
(設計:フランク・ゲーリー)
左のタワーがルマ・アルル( LUMA Arles)。
南仏のアルル市は、地中海の近くに平原が拡がるカマルグ地方にある、ローマ帝国時代から栄えた古い街です。街の中心にローマ時代の円形闘技場や劇場、中世ロマネスクの教会などがある、南仏観光の中心都市として発展してきました。また、ゴッホが「ひまわり」などのいくつかの名作を描いた街としても有名です。
パルク・デ・ザトリエの工場跡を
改築した諸施設。
今年6月26日、この街に新たな現代的モニュメントが登場しました。その名は、ルマ・アルル(LUMA Arles)。56㍍の高さと、非常に複雑な外観を持った巨大なタワーです。設計者は、フランク・ゲーリー。スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館やパリ・ブローニュの森のルイ・ヴィトン財団の美術館などの強烈なインパクトを持つ建築を、世界中で建設している建築家です。
ルマ財団(LUMA Foundation)は、2004年スイス・チューリヒに設立された非営利の団体で、現代アート、写真、出版、マルチメディアなどの分野で活躍する個人を支援し、環境問題、人権、教育、文化全般に及ぶ活動を促進することを目的としています。
2014年、ルマ財団はアルルの鉄道車両製造・修理工場の広大な跡地に、パルク・デ・ザトリエ(Parc des Atliers)と名付けた総合文化施設の建設を始めました。その中心の旗艦的な建物がルマ・アルルで、フランク・ゲーリーが設計を担当し、他に6棟の工場を改築した展示会場や宿泊施設をドイツ人女性建築家のアナベル・セルドルフ(Annabelle Selldorf)が担当しました。更にこれらの施設全体に及ぶ公園が造られ、市民や観光客に終日開放されています。
外面と同じくステンレス・ブロックが
ルマ・アルルは、素材にガラスとコンクリート、そしてステンレス製の小さなブロックを使用して建てられています。ゲーリーはこの建物のデザインをする際に、ゴッホのアルルでの代表作「星月夜」と、アルルの近くにあるアルピーユ山塊の岩場の風景、そして建物の基盤のガラス張りのロトンド(円形ホール)に対しては、アルルのローマ遺跡である円形闘技場から着想したと語っています。
建物を覆う小さな無数のステンレス・ブロックは、天候によってさまざまな表情を建物に与える効果を持っています。その結果、建物はまるで生き物のように、時々刻々表情を変えていきます。今回も日没近い時間には、建物の西面が、太陽光の反射で無数の炎を上げているように見えました。
このあまりにも現代的な建築に対しては、2千年近い歴史を誇るこの町のローマ遺跡群との景観上の調和が厳しく求められたようです。計画は何度も練り直され、着工から7年を経て今回の完成に至りました。
南仏アルルに新たに登場したこの場所は、新しい観光名所としても今後発展していくものと思います。