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ポルトガル・ポルト
「セラルヴェス現代美術館」

(設計:アルヴァロ・シザ)
世界の現代建築を訪ねる旅ー2
 

ルトガルを代表する建築家と言えば、まずはアルヴァロ・シザ(Alvaro Siza 1933年生87歳)とエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura 1952年生68歳)の名前が浮かぶでしょう。それぞれ1992年と2011年にプリツカー賞を受賞しています。2人が活動の中心にしたのが、ポルトガル第2の都市ポルトで、ここの大学の建築学部を拠点としました。
 ポルトは観光都市として近年人気が高く、特に建築の面では、歴史的建造物と近代建築双方の見所が多いことは、昨年夏の165号の記事でご紹介しました。この時ご紹介したポルトの建築は、この2人のポルトガル人建築家の作品ではなく、オランダの建築家レム・コールハースの作品で、音楽ホールのカーサ・ダ・ムジカでした。しかしポルトにはシザとモウラの代表的な作品がいくつかあり、ポルト市を訪問する機会にはぜひ見学されることをお勧めします。

カーサ・デ・セラルヴェス内部の展示空間。
カーサ・デ・セラルヴェス全景(建物と庭のピンク色が美しい)

ず、シザの作品は、ポルト市の西部にあるセラルヴェス(Serralves)現代美術館が彼の代表作品と言ってよいでしょう。この美術館は、セラルヴェス財団が所有する18㌶に及ぶ広大な公園の中にあり、主に現代アートの展示を行っています。シザの1999年の作品で、建築物の規模としてはそれほど大きなものではなく、高さもほぼ平屋と言ってよいくらい抑制された建物です。シザの建築の特徴として挙げられる、白の直線的な壁がここでもふんだんに使われています。シザの作品によく登場する、外部と建物の内部を区別する遮壁の存在がこの建物にも見られます。それらはまずこの美術館のエントランスやアプローチに見られ、独特な雰囲気を醸し出しています。更に、美術館の内部にも、空間を遮断する白い壁が多用されています。
の公園にはもうひとつ特筆すべき建築があります。それは、カーサ・デ・セラルヴェスと呼ばれる、ホセ・マルケス・ダ・シルヴァ(José Marques da Silva)が1925年に設計したヴィラです。時代が少し古く、ポルトガルでは珍しいアール・デコ様式の建築として有名なようです。こぢんまりとしたシンメトリックな建物で、壁面のピンクの薔薇色が美しく感じられます。このピンク色の壁面は庭園の土の色と同色で建物と庭園の一体感が秀逸です。庭は幾何的なデザインの池や水路で構成されているフランス庭園様式になっています。庭園の周りには森林公園が広がっていて多くの人たちが散策を楽しんでいました。
 セラルヴェス現代美術館には、地下鉄カーサ・ダ・ムジカ駅からバスに乗って行くのが判りやすいです。またそこから3つ先のトリンダーデ駅が、ソウト・デ・モウラの代表作としては、簡単に見学できてお勧めです。

エントランスに向かうアプローチ
現代美術館のエントランス(かなりこぢんまりとした印象)
現代美術館内部の展示(シザの作品の模型が展示されている)
ポルト市内の地下鉄トリンダーデ駅(ソウト・デ・モウラの作品)
文・写真/佐藤文子(パリ在住)