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ポルト カーサ・ダ・ムジカ

(設計:レム・コールハース)
~プリツカー賞受賞建築家の作品探訪(その 30)~
 

回は欧州最西の国、大西洋に面したポルトガルの建築をご紹介します。ポルトは首都リスボンに次ぐ、人口160万人を数える同国第2の都市です。ポルトは近年、国際観光都市として人気を高めていて、多くの観光客が訪れています。市内の複数の歴史的建造物が世界遺産に指定されており、最も有名なモニュメントとしては、エッフェル塔を設計したエッフェルの弟子セイリグが設計し1886年に完成した、ドウロ河に架かるドン・ルイス一世橋が挙げられます。

建物下部(エントランス付近)のオーバーハング構造。地表のうねり。
大ホール。

紹介するカーサ・ダ・ムジカ(Casa da Musica)は、ポルト国立交響楽団が拠点を置く、同市の中核的コンサートホールで、2005年に完成しています。建物の設計は、オランダの大建築家で2000年のプリツカー賞受賞者の、レム・コールハース(Rem Koolhaas)氏によるもの。同氏の作品は、このシリーズではその24(147号)でパリにあるラファイエット・アンティシパシオン(Lafayette Anticipations)を取り上げています。
 
まず外観は、外壁の真っ白な色彩と、大胆な配置のガラス窓に目を惹かれます。形態は不規則な多面体で、直方体を刃物で削ぎ落したような形。線としては直線的で、すっきりとした形となっています。特に下面がせりあがったオーバーハング構造になっているのが印象的です。
周りは広場となっていて、建物の存在感はとても強いものがあります。広場の地面は全体に曲面を描いていて、うねったようになっているため、ここでスケートボードを楽しむ人が多く見られます。
 
外観のインパクトだけでなく、ホール内部の音響の良さも、比類ないものとして評価されています。ホールの席はどこでも均等な音響が保証されているため、席による値段の格差が無いそうです。実際に中に入ってみると、随所にウルトラ・モダンなインテリアが見られ、超現代的なイメージを演出しています。
ホール自体は1200席程度の中規模のものですが、ガラス窓によって大きく外界に開いている点が特異に感じられます。内装材には木材が使用され、黄金の装飾が施されたオルガンが目を惹きます。建物全体もこの手の施設としては比較的こぢんまりとしています。
 
ーサ・ダ・ムジカは、ポルト市の中心のやや北西側のボアヴィスタという地区に位置しています。同名の地下鉄駅が直ぐ近くにあるので、市内のどこからでも簡単に行くことができます。

 大ホールからエントランスへ降りていく、証明の美しい階段。
レセプション。
大ホールのホワイエ。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)