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スイス・バーゼル ヴィトラ・デザイン・ミュージアム

(設計:フランク・ゲーリー)
~プリツカー賞受賞建築家の作品探訪(その 28)~
 

南東側の外観。

回は、スイス・バーゼルの隣町、ヴァイル・アム・ライン(Weil am Rhein)にあるヴィトラ・キャンパス(Vitra Campus)の建築群から、もうひとつご紹介したいと思います。
 
回(その27)は、家具メーカーのヴィトラ社のショールーム、ヴィトラ・ハウス(ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)をご紹介しました。これに隣り合って、メインエントランス兼博物館のヴィトラ・デザイン・ミュージアムがあります。ヴィトラ・キャンパスを訪問する際には、先ず寄ることになるメインの建物です。
 
このミュージアムは1989年にプリツカー賞を受賞したカナダ生まれのアメリカ人、フランク・ゲーリー(1929年生)の設計で、受賞年の1989年に完成しています。

ドーシの展示(Amdavad ni Gafa

ランク・ゲーリーの建築は、このシリーズでも何回か取り上げてきました。スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館やパリ・ブローニュの森のルイヴィトン財団の美術館などは、その街の顔にさえなっているインパクトの強い建物といえると思います。それらに比べるとヴィトラ・デザイン・ミュージアムは小規模な2階建てで、恐るべき威圧感のようなものは感じられません。しかしゲーリーの作品らしい特徴に溢れています。
 
内部は複雑に構成された展示空間になっていて、天窓や採光窓によって効果的に照らされていることがよくわかります。展示スペースというものは、単に事務的に展示を行う場ではなく、次に何が現れるのかなとわくわくさせてくれるような刺激に満ち、展示物を眺めること自体が楽しく感じられ、思わず溜息が出てしまうような場であってほしいとつくづく感じさせられました。
 
訪問した時には、2018年にプリツカー賞を受賞したインドの建築家バルクリシュナ・ドーシ(Balkrishna Doshi)の業績を紹介する展覧会を開催していました。非常に充実した内容で興味深かったです。
 

敷地にあるオブジェと、ミュージアムの北東側の外観。
北側の外観。

ィトラ・キャンパスには、ゲーリーの建築が他にもあります。ひとつは、ミュージアムのすぐ隣のヴィトラ・デザイン・ミュージアム・ギャラリー。2003年の完成です。また製造所の敷地内にミュージアムと同じ年に完成した製造棟があります。いずれもゲーリーらしい、動きのある外観の建物になっています。

建物内部。吹き抜けの天窓。
建物内部。階段と採光窓。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)