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スイス・バーゼル ヴィトラ・ハウス

(設計:ヘルツォーク&ド・ムーロン)
~プリツカー賞受賞建築家の作品探訪(その 27)~
 
五角柱が重なる外観とカフェ。

イス北方の街、バーゼルはチューリヒ、ジュネーヴに次ぐスイス3番目の都市です。ライン河を挟みフランス、ドイツとの国境を形成する、古くからの交通・産業・文化の要衝として栄えてきました。バーゼルに隣接するドイツ圏内のヴァイル・アム・ライン(Weil am Rhein)という町に、建築の聖地と呼ばれる、ヴィトラ社の敷地、ヴィトラ・キャンパス(Vitra Campus)があります。

天井に覗く階上の展示。
ヴィトラの椅子

ィトラ社はスイス法人の家具メーカーで、特に椅子が有名です。ヴァイル・アム・ラインには、もともと同社の家具製作工場や倉庫がありましたが、1981年の火災によりその大半を消失してしまいました。再建を機にヴィトラ社のオーナーはこの地を他に類を見ないような、世界的建築家のデザインした建物が集まる場所にしようとしました。その結果、ヴィトラ・キャンパスが建築の聖地とまで言われるようになったことは、関与した建築家の顔ぶれからも容易に納得できます。
 
まずショールームであるヴィトラ・ハウスはヘルツォーク&ド・ムーロン、隣り合う展示館ヴィトラ・デザイン・ミュージアムはフランク・ゲーリー、それに並ぶように建てられている会議棟は安藤忠雄、工場敷地内の広大な製品倉庫・配送所はSANAA(妹島和世・西澤立衛)、そして私設消防署はザハ・ハディドの作品です。この他にレンゾ・ピアノ、アルヴァロ・シザの建築もあります。この全員がプリツカー賞受賞建築家です。
 

内部の展示。五角形の窓に面した談話スペース。
広い窓を生かしたリビングの展示。

ときわ存在感のあるヴィトラ・ハウスを設計したヘルツォーク&ド・ムーロンは、2001年にプリツカー賞を受賞。ふたりはバーゼル出身のスイス人で、まさに地元の建築家です。
 
2010年にオープンしたヴィトラ・ハウスは、断面が五角形の棒状の構築物を、中心軸に沿って角度を変えて積み重ねた複雑な構造。よく見ると5層に重なった五角柱体が12個組み合わせられています。1階はカフェとミュージアムショップ。2階から上はショールームで、美しい家具が展示された部屋が次々と展開しています。特に、五角形の突出した窓部分にはリビングルームが展示されており、ワイン畑に面した部屋は、他にも増して美しい場所になっていました。最上階にあるテラスからは、ヴィトラ・キャンパスの広大な敷地を見渡すことができます。

大きな窓に広がるワイン畑の眺望。

らせん階段と吹き抜けの照明器具。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)