ワシントン・ナショナル・ギャラリー東館
今回、本シリーズでは初めてアメリカ合衆国の建築をご紹介します。そもそもプリツカー賞はアメリカで創設された賞で、1979年から今年まで、原則毎年1人(もしくは1組)が選ばれています。これまでの40年間で日本人の受賞は7回。しかも最近の10年間には、今年の磯崎新氏を入れて4回(4組・5人)が受賞しています。アメリカも同じくこれまでに7回受賞していますが、2005年のトム・メイン氏以来受賞がありません。
イオ・ミン・ペイ氏は中国系アメリカ人で、1983年(アメリカ人建築家としては3人目)のプリツカー賞受賞者です。ルーヴル美術館のガラスのピラミッドの設計で知られています。1917年に中国の広東で生誕、今年5月16日に102歳という高齢で他界されました。
ご紹介する建築があるのは、首都ワシントン。ホワイトハウスや国会議事堂(キャピトル)からほど近い、スミソニアン宇宙航空博物館などの有名な博物館が林立する地区です。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、絵画美術館として世界有数のコレクションを誇る第一級の美術館です。1941年に西館、その後1978年に東館が完成しました。西館は19世紀までの美術品を展示、東館には20世紀以降の近代美術を主に展示しています。東館はキャピトル・ヒルに聳え立つ国会議事堂と、広大な庭園を隔てて対峙しています。
東館は竣工から既に40年以上が経っていますが、その外観は今でも斬新で古さを全く感じさせないように思われます。この建物をぐるりと囲む広々とした道路及び歩道から眺めると、基本的に4面ある外面がそれぞれ全く違った表情をしていて、とても複雑性に富んでいるように感じます。
またこの建物は、実は二等辺三角形と直角三角形を組み合わせたような形状をしていて、それがこの建物に複雑な外観を与えているようです。そして中央部の屋根は、ルーヴルのピラミッドを彷彿するようなガラス建築となっています。イオ・ミン・ペイ氏が建物内部の光を重んじた建築家であったと言われていることを思い出させてくれます。