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ローマ マクシ 国立21世紀美術館

(設計:ザハ・ハディド氏)
~プリツカー賞受賞建築家の作品探訪(その 25)~

回はイタリア・ローマの市街地の北部、フラミニオ(Flaminio)地区にある、国立21世紀美術館をご紹介します。21世紀をXXIと表現して、愛称でマクシ(Maxxi)と呼ばれています。名前の通り21世紀の現代美術を主に展示するため、2010年に竣工しました。
 設計したのは、1950年にイラク・バグダッドで生まれ、2016年3月に65歳で亡くなった英国籍の女性建築家、ザハ・ハディド(Zaha Hadid)氏。2004年にプリツカー賞を受賞し、日本でも新国立競技場設計案などで知られています。このシリーズで同氏の作品を取り上げるのは3回目です。

突出部分が特徴的な、中庭側の外観。

て、ローマといえば、古代ローマ以来、2千年の歴史を持つ古い街です。建物は古いものが中心というイメージがあります。しかし21世紀となって、現代建築を大胆に街並みに組み入れていく試みが見られるようになりました。パリでもそうですが、歴史的建造物が豊かな都市では、現代建築を都市の中にいかに調和を持たせていくかが常に課題となります。そこにどのようにその都市が挑戦しているのかを見ることは、とても興味深いことです。

3階部分からエントランスを見下ろす。

クシをグイド・レニ(Guido Reni)通りから見ると、建物の白い色は相当目立ちますが、デザイン的には、周辺の古典的な建物と調和しており、特に奇抜な現代建築とは感じられません。しかし敷地の中に入った反対側は、広々とした空地になっていて、そこから見る建物は、複雑な曲線や突出した構造物などで、いかにも斬新な建物であると感じられます。

建物のエントランスと展示物。

の印象は、内部に入ると一層強くなります。エントランスホールや階段、展示スペースの床の波打ち、通路や天井の曲線などが実に大胆で、気持ちが高揚してきます。特に、白い壁との対照で、黒く塗られた階段の存在感は大きく、天井に抜けるパースペクティヴのインパクトが強く迫ります。
 またこの美術館では、従来の絵画・彫刻といったアートの範囲を越えた映像芸術が主力になっていて、音声を伴っているケースも多く見られます。今回も相当に楽しむことができました。
 

街並みに馴染んでいる、グイド・ レニ通り側の外観。
入口カウンターと階段。
展示空間

ローマはメトロやトラムがあまり街全体を網羅していないのですが、マクシへは、幸いポポロ広場の近くのフラミニオ駅からトラムが通じていて、これに乗ればとても楽に行くことができます。

文・写真/佐藤文子(パリ在住)