HOME | コラム集 | パリ通信 | パリ ラファイエット・アンティシパシオン

パリ ラファイエット・アンティシパシオン

(設計:レム・コールハース氏)
~プリツカー賞受賞建築家の作品探訪(その 24)~

今回は2018年3月にお目見えした、ラファイエット・アンティシパシオンをご紹介します。

内部の展示空間。全体が吹き抜けになっています。

ちらの建物はブールバール・オスマンにある有名な老舗デパート、ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)を運営している財団が所有・運営しています。19世紀に建造された建物(かつては倉庫や帽子の製作所、最近では学校として使われていた)を再建したものです。新しい建物は各種芸術の展示空間、イベントハウスとして竣工しました。ここでは単なる展示を行うだけではなく、創作家たちが集い合って新たな創造を生み出すことができるような空間を意図しているそうです。
 この施設があるのは、パリ4区のマレ地区と呼ばれる場所です。比較的古い建物が多く、中には歴史的建造物に指定され博物館などに利用されている建物もあります。付近の道路は狭く入り組んでいるところが多く、大規模な再開発は難しいと見られている地区でもあります。建物があるプラートル通り(Rue Plâtre)も狭い通りで、一車線のみの一方通行となっています。

建物のファサード。普通の建物に見えます。

のような場所での再開発案件は、各種規制が厳しいこともあり、外観をあまり変えず内部のみを改造する手法がよく見られます。この建物は、内部全体が大きな吹き抜けになっていて、外観からは想像のつかない大空間を造り出していることに驚かされます。また内部は大きなガラス張りの展示スペースになっていて、もともと中庭だった部分を吹き抜けの空間として利用していることに気付きます。この部分には機械の力によって床ごと移動が可能な設備が付けられており、自在な展示空間が創出できるようにしてあります。この構造は入り口とは反対側の通路から見上げるとよくわかります。

エントランス内部。

ファイエット・アンティシパシオンを設計したのは、2000年にプリツカー賞を受賞した、レム・コールハース(1944年11月オランダ・ロッテルダム生まれ74歳)と彼の建築事務所OMAです。
 取材時、こちらの施設では、ドイツ人と日本人との間に生まれた芸術家Simon Fujiwara氏の「革命」と題する展示が行われていました。この施設の大きな空間を存分に使った立体的な新しい感覚の展示となっており、この施設のコンセプトの面白さを体感することができました。

入り口の反対側から見た建物の中空の部分。
建物の前の狭いプラートル通り Rue Plâtre
 ポンピドゥーセンターが見えます。
中空部を展示空間とする鉄骨構造。
展示空間の床を上下する柱の構造。
文・写真/佐藤文子(パリ在住)