暮らしの実験空間「TAIYA SPACE」

福岡市博多区美野島にあるTAIYA SPACEは、屋台建築家の下寺孝典さんが持つビルの一室。窓から陽の光が柔らかく差し込む部屋、白い壁にコンクリートの天井がのぞき、キッチンや板の間、生活感のあるここは展示、オフィス、アトリエ、カフェなどさまざまな用途の実験空間です。
下寺さんと出会い、人々が集う空間を作りたいという思いから、初めて写真展「Sky in my pocket」を開催。今は亡き祖父のフィルムカメラ、オリンパスペンで撮影した、昨年の欧州旅の写真の展示には、3日間で総勢70名以上の方が足を運んでくれました。

忘れられないイタリアの海の輝きを持って帰ってほしくて、扉に貼った写真。

下寺さんがDIYしたTAIYA SPACEは、それぞれに楽しめるまったり空間。
ビジュアルアーティストの友人、花田智浩さん(ともさん)に「ダンサーのさとちゃんだからできる展示の仕方がいいよね。写真が踊ってるみたいに展示してみる?」との提案から「Dancing photos」の展示が生まれました。メインビジュアルの英国リッチモンドで撮影した木と友人の写真を大きく印刷し、A4サイズ16枚にカット。あの日感じた陽の光や風を思い出し、芝生から舞い上がり踊るようなイメージで、紙をくねらせたり、立体的にカーブを描くように白い壁に貼っていきました。
開催前に幾度も会場を訪れ、どこにどの写真を展示し、映像を投影するか、写真サイズや組み合わせなど、ともさんとあれこれ相談し、うまくいかなかったアイディアも、実験できる時間に心踊り、空間をつくるための蓄積が写真展を作り上げたように感じます。

昨年の旅から奇跡のような偶然もありました。旅で出会ったオーストラリア人アンディとはオランダ、ユトレヒト滞在先のランドリールームで、好きな音楽の話で仲良くなりました。2月初め、アンディから「今月、友達と日本に来てるんだ!」と連絡が。福岡まで写真展を見に来てくれ、一緒にもつ鍋を食べたのも、忘れられない思い出です。

旅で出会った人たち、再会した友人たちの写真は電車の切符や現地で購入した絵葉書と共に。

ヨーロッパ旅で出逢えたアンディに、博多美野島の写真展にて再会できました!
最終日、コンテンポラリーダンスクラスの生徒二人が写真展に遊びに来てくれました。会場に置いた感想ノートを開き、何やら二人で楽しそう。ノートには、感想と共に、ページいっぱいに絵を描いてくれていました。私の写真から、新しい表現が生まれた。こんな嬉しいことはありません。
写真展で、初めましての友達同士が会話をしたり、仕事前にふらり写真を見に寄ったり、ここで飲食イベントしたい!と提案があったり。自由な発想と幅広い表現を受け入れてくれる安心感のあるTAIYA SPACEは、ダンスというジャンルを越えて、写真表現という私の新たな挑戦を後押ししてくれました。そしてこの挑戦は、表現する面白さを、もう一度、私に思い起こさせてくれました。

楽しそうに絵を描き、語り合うふたり。
文・写真
福田智子 Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
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