HOME | コラム集 | ロンドン通信 | 胸が熱くなる 舞台との出逢い オランダ ユトレヒト

胸が熱くなる舞台との出逢い オランダ ユトレヒト

024年夏、今年も呼ばれている気がして、ダンスワークショップ参加に、友を訪ねてヨーロッパを旅しています。コロナ後しばらく日本にいたからか、英国在住時よりも欧州がより異国に感じます。
 偶然SNSで見つけた、ダンサーとミュージシャンで構成されるバンド「De Dansers」。ダンサーも楽器を奏で歌い、ミュージシャンも身体を使い踊り表現する「ダンスコンサート」をするグループとして知られています。スマホ画面から溢れてきた彼らのエネルギーをじかに自分の肌で感じたくて、オランダ第4の都市ユトレヒトを初めて訪れました。

トレヒト中央駅から徒歩12分ほどの会場Het Huis Utrechtには、カフェスペース、中庭、会議のための部屋や劇場空間があります。
 今回はDe Dansersとロッテルダム発の音楽&パフォーマンス集団CLUB GEWALTによるコラボレーション作品の上演でした。開演時間になると、出演者10名が勢いよく舞台に走り込んできました!場内満杯の130名弱の劇場で、観客をじっと見つめる人、にわかに喋りだす人、全員のエネルギッシュなユニゾンダンスで、空間は瞬く間に沸騰した鍋のようになりました。

運河に囲まれたユトレヒト中心地は爽やかな風が通ります。

作り手の開発や実験のための場所をテーマとした「Het Huis Utrecht」。

入口上部には、夜はネオンサインで輝く“Your Dreams Merge Here”(あなたの夢がここで融合します)の文字が。

大きな窓から光が入る建物内も、明るい雰囲気。

ンサーの動き、発する言葉、ギター、ドラム、キーボードが奏でる音、ひとつひとつが物語を紡ぎます。時にダンサー2人が互いの体重を支え合ったかと思えば、勢いよく飛び込んで相手に抱きついたり、力強く押しあったり。身体のぶつかり合いは、人の力強さと脆さを同時に見ている感覚になりました。演者3人が観客に対しジェンダー、家族との関係、環境問題について実体験を語りかける瞬間もありました。彼らの言葉はとてもリアルで、私の心にスーッと入りこんできました。私たち人間は喜び以外にも、怒りや悲しみの感情も抱き、それらの感情を表してもいいんだ、と思い起こさせてくれました。将来が見えないこの時代に、未知なる未来へ共に手を取り進んでいこう! という彼らの強いメッセージが作品を通して真っ直ぐに伝わってきました。

演者が使用していたギターや衣装、蛍光灯などの小道具。

シアターに入った瞬間、既に準備されていた楽器の数々にワクワク!

ダンス、音楽、言葉で私達に熱いエネルギーを届けてくれた彼らにブラボー!

生は時としてどうしようもなく大変で、一筋縄では行かない。けれども一筋縄でうまくいかないからこそ、より深いのかもしれない。今、大切にしたい人たちと共に、私もより良い未来を作っていきたいと強く思いました。いつかダンスと音楽のエネルギッシュなコラボレーション作品を作りたい。私の気持ちに火をつけてくれた、心熱くなるユトレヒトでの出会いでした。

パフォーマンス後に見たユトレヒトの夕焼け空に、これまた熱い気持ちになりました。

文・写真
福田智子  Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
プロフィールはこちら