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Art de Night 12 in 八女 -Reborn-

よ風が通り抜けてゆく古民家と庭。新緑の山とせせらぎの川に挟まれたその空間で、人々のエネルギーが交差する。福岡県八女市上陽町、Villa ARTIS(ヴィッラアルティス)にて、コロナ禍を越え生まれ変わった「Artde Night」。
福岡今泉のイタリアンレストランDomusに始まった「Artde Night」。手笛など、さまざまなジャンルのアーティストを招待し、アート好きな人やアートに初めて触れる人が、共にアートについて語らう空間を作ってきました。
世界的パンデミックが広がり、約2年半ぶりに開催された12回目のテーマはReborn(再生する、生まれ変わった)。「Artde Night」の再出発であり、新たな地八女で大地と自然を感じながらの踊りとなりました。

回は、福岡の伝統工芸品で今ある八女和紙とコンテンポラリーダンスのコラボパフォーマンスを企画。八女市柳瀬にある溝田和紙の八女手漉き和紙職人溝田俊和さんにお話を伺い、紙漉きの様子を見せていただきました。
頭上に設えられた、よくしなる竹の束から紐を吊るし、和紙を漉くための簑桁を使います。和紙の原材料の八女桔を繊維にまでほぐしたものと水、ネリと呼ばれるトロロアオイの根の抽出液とをあわせた漉き舟の中の液を掬っていきます。私も実際に紙漉きを体験しましたが、簡単に見えて難しい!溝田さんのようにうまく腕のカが抜けず、紙の厚さは薄くならずに原料が偏ってしまいました。
溝田さんは和紙となる液体をテンポ良く掬いあげ、みるみる繊維が絡みあい、薄くまた強靭な和紙ができあがりました。何度見ても動きに無駄がなく、きっちりと大きな紙が仕上がっていく。見ていて穏やかな気持ちになりました。八女の新鮮な水を使い、和紙は八女の人の手から生まれていました。

程よく力の抜けた溝田さんの腕の動き。縦横に繊維を並べるような、一連の所作が美しい。

紙漉きの際の掬い上げる音、しずくが跳ね返る音、録音した独特の音の粒は、コラボパフォーマンス の冒頭、ダンスの動きを導き出す音楽として使用。人が生きるより長く残ってゆく和紙と今この時代を生きるダンサーたちの身体、和紙を抱え、握り、くしゃっと聴こえてくる音が、Villa ARTISの空間で混ざり合い、新たな動く彫刻のような作品が生まれました。

Villa ARTISの広場ピアッツァトリニータ。
今回のテーマRebornのように、新たに生まれる、草木の循環をダンサーの身体で表現。
※ Photo by Miyuki Toudou

ンサーが八女和紙と共に舞う中庭は、烏のさえずり、心地よい風、そして夕方の西日に照らされて、屋外パフォーマンスならではの豊かな雰囲気に包まれました。踊ることを通して、その場に居た人たち、そして空間とつながったように感じました。アートと人がつながる「Artde Night」。少しずつ再始動です。

オープニングは、人それぞれが持つ色が出会い、混ざりあってゆく様を表硯したダンスパフォーマンス「merging」。
※ Photo by lennybook
繊維が絡まりあい、デコポコとした手触りを持つこの和紙の質感は、植物が持つ大地の記憶まで感じさせるようだ。
風に枝葉がゆれる音、踊りと共に変化する和紙の表情、太陽の光を浴び、Villa ARTISの空間に新たなアートが生まれた。
※ Photo by Miyuki Toudou
Art de Night歴代のチラシ。

文・写真
福田智子  Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
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