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ソローリャ美術館 ― 絵からあふれるスペインの光 ―

界的パンデミックが始まり、2年半が過ぎようとしていた頃、ヨーロッパの空気を吸いに行きたい感情がふつふつと沸いていました。今しか行けないと思い、欧州にいる友人を訪ねて、思い切って旅へ出ました。2022年6月中旬、ドキドキしながらのヨーロッパ旅は、事前に入国の下調べもしていたので、国境を超える移動も比較的スムーズでした。パンデミックが始まった頃を思い返すと、ヨーロッパの人々はコロナと共存しての日常を取り戻しているように感じました。

ペインを訪れた際、素敵な美術館と出合いました。マドリード北部チャンベリ地区に位置するMuseo Sorolla(ソローリャ美術館。ソロージャ、ソローヤとも読む)。スペイン、バレンシア出身の画家ホアキン・ソローリャが家族と住んでいた家でもあり、現在は彼の作品が数多く展示されています。1911年に完成した建物は、できるだけ家族と過ごせるようにというソローリャの願いの元、制作空間と生活空間が隣り合っていました。正門を入って出迎えてくれる美しい庭は、ソローリャ自身が植物を選び、デザインした庭であり、晩年、彼にとって絵を描くお気に入りの題材のひとつでもあったそうです。噴水や地面、階段にも、スペインらしい鮮やかなタイルが見られます。今でも、家族や友人と訪れる人、思い思いにその庭をキャンバスに描く人たちの憩いの場となっています。

ソローリャお気に入りの庭へとつづく入り口。Museo Sorollaの字体が可愛らしい。

ローリャや家族がかつて暮らしていた家の中へ入ってゆくと、あっと驚く赤い壁に囲まれた部屋に、色鮮やかな絵の数々が目に飛び込んできました。彼の光と影の描き方は写真を見るような、その絵に描かれた太陽の日差しをまるごと肌に感じるようでした。印象的だった作品のひとつは、馬と少年の絵に描かれた海の色。何種類もの異なる青色に加え、緑や紫で描かれている波の絵を見るのは初めてでした。

今回の旅で忘れられない絵の一枚。スペインの日差しと風、温度まで感じるような絵でした。

 アトリエとして使われていたこの部屋には、ソローリャが使用していた筆も展示されています。 

日陰と日当たりのバランスが良い庭は、みんなの憩いの場所。 

物や花、草木が描かれた鮮やかなタイルの階段は最初の展示室へとつづきます。

日、友人を訪ねてバレンシアへ足を伸ばし、カステジョの浜から海を見たとき、驚きました! 燦燦と降り注ぐ陽の光を受け、ソローリャも見つめていたかもしれない波は、青から緑や紫へと変化し、確かにそこに存在していました。彼の描く絵の中に遊ぶ子どもたちや女性たちは、スペインの太陽を浴び、キャンバスの中で生き生きと、生き続けているように感じました。美術館を後にしダンスクラスへ向かうとき、私の心は満たされ、足取りまで軽やかになった気がしました。ソローリャの絵にあふれる光を浴びて

友人が住むカステジョにあるビーチ。ソローリャの絵の中にいるような、子どもから大人まで活気あふれる場所でした。

どの部屋にも窓があり、建物の中に降り注ぐ光が美しい。 

足元に散らばる花のデザインタイルにも、遊び心があふれる。

文・写真
福田智子  Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
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