童心に戻れる場所 海の街ケント
海の見える街ケントへ。友人のご家族の自宅にお世話になりました。家から一本の道を挟んだすぐ向こう側には、広々とした海。リビングにある窓からは美しい海が一望でき、一日中波の音が聞こえます。木でできた机や革のソファ、茶色を基調としたお部屋は、優しい色合いで味わい深く、のんびりできる空間でした。夜は友人のお父さんがチキンをオーブンで料理してくださり、みんなで波の音を聴きながら、ゆったりと古い映画を見ました。
街はロンドンやバーミンガムなどの大都市に比べると、すごく静かで建物も少なく、もっと空間にゆとりがあるように感じられます。少しにぎやかな通りでは、カフェやコーナーショップ(日本でいうコンビニのような店)に、雑貨屋さんが建ち並んでいました。
浜辺沿いには、ミントグリーン、イエロー、スカイブルーなどカラフルな壁色の家々も並びます。
海上の空は変化が激しく、さっきまでお日様があたりキラキラと輝いていた海は、あっという間にグレーの曇り空の下、今にも大きな波が襲いかかってきそうな海へと変わっていきました。ドーバー海峡を挟んで向こう側に見える大陸を指さしながら、友人と「あそこは、きっとフランスかなぁ」と話をしました。ドーバー海峡を泳いで渡った人もいるんだとか。
浜を歩くと、海からの風を頬に感じました。ケントの浜は砂浜ではなく、波によってうちあげられた、角の無い多くの石によってつくられています。大きな貝殻や小さな貝殻、平たい石、まあるい石、大人気キャラクター、スポンジ・ボブのモデルとなったシースポンジ(sea sponge)も、浜に流れついていました。
昔から地元福岡の浜へ行くと、貝殻を拾うことが大好きだった私は、さまざまな貝殻を見つけては拾いあげ、また次、そのまた次と、まるで子供の時に戻ったかのように、貝殻拾いに夢中になりました。10歩ほど先へ行ってしまった友人に「さとこお~‼」と声をかけられ、ごめん、ごめん!と渋々友人の元へ駆け寄りました。私の拾った貝殻を見て、友人は一言「これは、ヤドカリのお家になるから返してあげないと」と、貝殻のひとつを浜へ戻しました。私も友人も、その浜辺で童心に戻ったかのようでした。寄せては返す波の音を一日聴いていると、海が私をまるごと受け入れてくれるような気がしました。自然を感じた滞在の後、ロンドンへの帰り道、清々しい気持ちでケントを後にしました。
家族の愛猫ベッツィージョイも、ケントの旅を素敵な時間にしてくれました。
文・写真
福田智子 Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
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