サイモンとルイーズと自家製パン
ロンドンでのダンスパフォーマンスで共演した、チェロ奏者サイモン。彼とのリハーサルをするために、2月上旬、Stroud(ストラウド)にあるサイモンとルイーズの自宅にお世話になりました。
ロンドンからバスで3時間ほど、西へ西へと進みます。到着した時すでに辺りは真っ暗闇。澄んだ空気を吸いながら、空を見上げるとそこにはいっぱいの星たちが。丘をのぼり、ふたりのお宅へ入ると、温かな愛らしい空間が私を迎えてくれました。赤や優しい青、色とりどりのクッションに、スウェーデンのカラフルなカーテン。イギリス人のサイモンとデンマークとスウェーデンの血をひくルイーズの部屋は、異文化が混じりながらも、お互いの色を大切に引き立てあっているように感じました。
翌朝は鳥のさえずりで目が覚め、ロンドンでの慌ただしさを忘れてしまうような静けさが、とても心地よく感じられました。朝ごはんは、ルイーズの作った手ごねパンにバターとジャムをつけて。オーガニックの小麦粉、水、パン酵母とシンプルな材料で作られたパンは、噛み応えがあり、香ばしく優しい味。本当に美味しくて、気づけばいくつもいくつも…手が止まりませんでした(笑)
サイモンとのリハーサルへ向かう時、「ちょうど新しいパンができたわ! ランチで食べて!」と、できたてホヤホヤのパンをルイーズが持たせてくれました。
リハーサルはストラウド中心地にあるクリエイティブとコミュニティのハブ、The Centre for Science and Art(CSA)のブルールームと呼ばれるスタジオで行いました。この建物には、雑誌編集者のオフィスをはじめ、ヨガのクラスが行われるスタジオや、アートの個展ができる部屋などもあります。サイモンも以前、この場所で音楽のライブパフォーマンスをしたとのこと。ブルールームには、教会のステンドグラスのような窓があり、温かい太陽の光とサイモンの美しい音と共に踊れて、とても充実した時間でした。
リハーサルは順調に進み、ルイーズのパンは分け合ってロンドンへ持ち帰ることに。再びバスで3時間、ロンドンへの帰路へつきました。自宅へ戻りカバンを開けると、ほんのりルイーズのパンの香りが。サイモンとルイーズとのあのステキな時間を、思い出と一緒にロンドンへ持ち帰ったような気がしました。その豊かな優しい香りは、ふたりとの朝ごはんの情景を、ほんのりと思い出させてくれるのでした。
文・写真
福田智子 Satoko Fukuda
福岡生まれ。ソレイヤジェインズインターナショナルバレエスクールにてクラシックバレエを始める。2013年より英国、ランベールスクールオブバレエ&コンテンポラリーダンスにて学びを深める。卒業後はイギリスを拠点に、ニューヨーク、韓国、フランスでもコンテンポラリーダンスを踊る。
Instagram @satokofukuda_dance @dancersnetwork_jp
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