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バルバラ・カポキン国際建築賞の
授賞式はサプライズの世界遺産で

タリア北東部のパドヴァ市で隔年に開催されるバルバラ・カポキン国際建築賞は、今年で11回目を迎え、今回はイタリアでも最も気持ちの良い6月に開催されました。300を超える作品が世界5大陸33カ国から集まり、国際建築賞に相応しい様相です。

パドヴァの街中で展示される受賞者展覧会。

年の授賞式は、デヴィット・チッパーフィールド卿による石切場の再生プロジェクト、アルカリ採石場で開催されていました。
 ところが今年の北イタリアは春からずっと不安定な天候が続き、採石場へ続く道の足元が危ないとの判断で、授賞式会場が変更になるとの連絡が入ったのは直前でした。採石場は涼しく足元も悪いため、いつもなら厚着と底のしっかりした靴など相応の準備が必要なのですが、今回はそれも不要とのこと。会場がどこなのか明かされないまま準備のしようもなく、心細いままパドヴァへ向かうことになりました。

優秀作品として健闘を見せたKino Architectsの「福岡市立平尾霊園合葬式墓所」

世界遺産とバロック音楽で優雅に演出される授賞式。

ドヴァは小規模ながら、見どころが散在する魅力的な街です。イタリアで建築の父と呼ばれるルネサンスの建築家アンドレア・パッラーディオの出身地でもあり、パドヴァや周辺に数多くの素晴らしい作品が残っています。
 そんな街の歩行者天国になった目抜き通りで、この建築賞の受賞者の作品が展示されます。授賞式の日は休日で人通りも多く、通りすがりの人がパネルに目を留める姿も見られました。ここでも主催者のカポキン会長は来場者に挨拶するも、「授賞式の会場は最後まで内緒です。素晴らしい会場であることはお約束します」と、行き先を明かしてくれません。

国際建築賞佳作のGrazzini Tonazzini+Colombo

年の大賞を受賞したのは、初めてポルトガル人で大賞に輝いたMiguel Marcelinoによる民族博物館「Casal Saloio」です。ポルトガルの小さな田園都市に位置する博物館は、土着の建築の素材や既存の建造物のボリュームを再現し、将来的には用途が有機的に変化することも見越した街と建築とのインタラクティブな在り方が評価されました。
 日本からの応募作品の中では、KINO Architects(ASJ登録)をはじめ4作品が優秀作品として展示されるなど、国際建築賞の中で日本の存在感を表していました。

大賞に輝いたポルトガルのMiguel Marcelino(左)

大賞Miguel Marcelinoによる民族博物館「Casal Saloio」

賞式の会場は、例年と同じようにパドヴァの街中から貸切大型バスで一斉に連れて行かれます。誰も行き先を知らされないままサプライズで辿り着いたのは、パラーディオの傑作で世界遺産にも登録されているラ・ロトンダでした。
 400年の時を超えて丘の上に佇むヴィラの光景は神々しく、内部の圧巻のフレスコ画には参列者一同、言葉がありません。オーケストラの生演奏が素晴らしいロケーションでのパーティーを更に盛り上げてくれ、イタリアという国の誇る歴史や遺産、芸術、自然などの恩恵に改めて思いを寄せる授賞式でした。

ラ・ロトンダ内部の見事なフレスコ画

ヴェネト州建築賞Scattola Simeoni Architettiによる社屋の再生計画

バランスの素晴らしいラ・ロトンダのファサード

写真提供/バルバラ・カポキン財団

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
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@sayakina_italy