HOME | コラム集 | イタリア通信 | 骨董と共に生きるイタリアの暮らし

骨董と共に生きるイタリアの暮らし

 イタリアの生活習慣や価値観の中でもイタリア人が特に大切にしているものに「長く愛されてきた伝統を重んじる」というものがあります。イタリアには世界で最も多くの世界遺産が存在します。脈々と続く街や建物の歴史を国全体で守ってきたという誇りをみんなが持っているからこそ、その思いは生活のインテリアや普段の習慣にも反映されます。

タリアは大きな都市だけでなく小さな町でも、週末や月末になると広場で骨董市が開催されます。出品されるものは家具、照明、リネン類、絵画、宝石類、衣類、本、レコード、時計、食器類、ガーデニング用品、おもちゃなど、生活に関わるあらゆる品。出店者も、普段は骨董屋を営んでいる人から個人業者までさまざまです。
 その中でも家具は年代によってアンティークとミッドセンチュリー、コンテンポラリーの3つに分かれ、デザインや価格帯も違ってきます。主にアンティーク扱いされるのは100年以上経ったもので、ミッドセンチュリーは1940年から60年代までの手工業時代から工業生産時代への移行期、それ以降がコンテンポラリーに仕分けされます。
 アンティークは各家庭で長く受け継がれていたものが現代の生活には馴染まなくなって出品されるケースが殆どですが、時代を経てもその価値は下がることがありません。そしてミッドセンチュリーのインテリアは時代を超えて愛される銘品も数多く、人気が衰えません。

週末に街の広場で開かれる骨董市。

アンティークに位置付けされる100年以上昔の木製家具。

ミッドセンチュリーの椅子はカバーを張り替えて出品。
 

まるで王室御用達の昔のベビーカー。

董市に出品されるもので目利きでなくても良質なものが見つけやすいのは、カトラリーや食器類でしょう。イタリアの老舗リチャード・ジノリやドイツのマイセン焼き、フランスのリモージュ製の磁器やクリストフルの銀器など、どこかのお屋敷の食器棚で、ほとんど使われないで眠っていた状態のものが、新品よりずっと安く出品されています。

ジノリの逸品が新品は6脚300ユーロ、骨董市で90ユーロ。

所狭しと並ぶクリスタルの食器。

ツとしては通い続けて目を養い、大体の価格帯を学ぶとお店の人とのやり取りも楽しくなっていきます。それはハードルが高い場合は、まずは巷で銘品と言われるものをネットサーフィンで見ておいて、自分の生活習慣に合ったものや好きなデザインを絞って頭に整理しておき、それを目当てに行く方法です。そして見つかった場合も高いと思ったら価格交渉を楽しんでみるのもよいでしょう。肝心なのは特に出会いがない時には手ぶらで帰るのも良しとして帰ることです。

出品している骨董屋の倉庫を利用した常設の店内。

 時代を超えて長く愛され使われ続けるものには理由があり、その良さを見て学ぶには骨董市は一番分かりやすい無料の屋外美術館です。ぜひ、自分にとって価値のある逸品を探しに出かけてみてはいかがでしょう?

昔の旅行カバンはアパレルのショーウィンドーの雰囲気作りに。

昔の木製ケースも値段の下がらない人気商品の1つ。

カラフルなホーロー製のガーデニング用品も人気のある品。

1900年代前半の鉄製ガーデンチェアは錆びても色褪せない。

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
Instagram
@sayakina_italy