オープンハウスの週末は、街中でお宅拝見!
リビングダイニングの大胆な開口部。
毎年恒例のオープンハウスの季節が、今年も巡って来ました。街中の個人住宅や公共施設、社屋や史跡などが無料で週末だけ一般公開されるイベントで、イタリアではトリノを皮切りにミラノ、ローマ、ナポリの4都市で開催されています。今回で6回目となるトリノでは6月10日(土)~11日(日)に開催。140を超えるロケーションに、2日間で延べ2万人超のビジターたちが訪れる一大イベントにまで成長しました。
待ち時間に、スタッフから工場だった建物の歴史を聞くビジターたち。
今年も主に「リノベした個人住宅」「下町の住宅街」にフォーカスして取材に回りました。1軒目に紹介するのは、街の中心から少々離れたところにある「Tra la Mole e Superga」です。MoleとSupergaはそれぞれ街を代表する観光スポットで、その双方が見える素晴らしい眺望がポイントです。廊下と各部屋の間仕切りを全てオープンにすることによって、より開放的な空間からパノラマを堪能することができます。
右端の洗面所からMoleがよく見える。
光がさんさんと入る広々としたリビングダイニング。 「Tra la Mole e Superga」
次に紹介するのは、外国人労働者が多く住む地域にある「Casa D’angolo」です。治安に対する不安感から避ける人も多いと思われる地区で、建物も老朽化しているのを見て、期待より不安の方が大きい中で見せてもらった住宅は素晴らしいフレスコ画が天井に残る、まるでギャラリーのようなスペースでした。ひとつひとつこだわりを持って選ばれたと思われるビンテージ家具も雰囲気によく合い、「家」を選ぶときに「地域」や「建物」など、外見に惑わされると視野が狭くなると思わされた物件でした。
一度中へ入るとまるでギャラリーのよう。
最後にご紹介するのが今年のMVPに選びたい、「Casa SLR」です。前述の「Casa D’angolo」と同じ地区にあり、イタリアでよく見る、集合住宅の中庭の倉庫(ガレージや物置に使われる)を改築して住宅にしたという、非常に勇気と発想を要する物件です。天井が高く大きな開口部からはワンルームのリビングダイニングに光が差し込み、ビジターには我関せずとばかりに昼寝している猫が、居心地の良さを物語っていました。
筆者の家「Terrazza Dora」も参加3年目を迎え、このイベントの中でも注目すべき要の物件として扱われるようになりました。街の中心から少々離れた場所にも関わらずオープン前からビジターが並び始め、一時は1時間半を超える行列ができるほどでした。2日間で650人ほどが訪れ、その中には以前にも来たリピーターや噂を聞いて来た人、階下のオフィスに勤務する人など数多くの新たな出会いがありました。
オープンハウスの醍醐味は、この「地元に対する新たな視点」「地元での新たな出会い」だと思います。この街に住む人々に「こんな所で居心地良く暮らす人がいるんだ!」というのをリアルに発信しながら、新しい視点を提供し続けていきたいと思います。
昔の写真や模型を元に建物の歴史を説明する筆者。「Terrazza Dora」
こだわって選んだビンテージ家具にセンスが伺える。「Casa D’angolo」
トップライトの書斎のハンモックではオーナーの猫が昼寝中。「Casa SLR」
文・写真/
西村 清佳 Sayaka Nishimura
@sayakina_italy