世界一のデザインの祭典
ミラノサローネから
①例年以上の混みようだったサローネ会場のエントランス。
世界で唯一無二のデザインの祭典ミラノサローネは、今年で61回目。3年ぶりにようやく以前と同じ4月開催に戻り、かつてない賑わいを取り戻しました。合計2000を超える展示は34%がイタリア国外(37カ国)から参加、4月18日から23日までの6日間で30万人超(昨年比15%増)の来場者があり、バイヤーや業界関係者のうち国外からは65%を記録。改めてこのイベントの存在意義と影響力を世界へ向けて力強く発信する結果になりました。
日本からも出入国の水際対策が緩和されて初のサローネということもあり、出展者、業界関係者共に多くの参加が見られました。マスクや入場人数制限に縛られることなく、自由に人が集まりつながるサローネの光景に、ようやく本来の姿に戻ったという実感が湧きました。
今年の展示では、多くのブランドが満を持して新作や新コレクションを発表し、アピールしていました。その中でも目にとまったのは角が取れたコロンとした柔らかいフォルム、パステル系の目に優しい色合い、触り心地の良いファブリック、エクステリアで使える家具などでした。
おそらく人々のインテリアに対する意識の変容に対し、どうすれば家での時間をより快適に過ごすことができるか? という問いに対する、各ブランドの提案がそういう方向性に向かったのではないかと思われます。
②エクステリアファニチャーは今後注目を集めるカテゴリー。トップブランドのソファを座り比べられるのもサローネならでは。
③フランス発のRoche Bobois(ロッシュ ボボア)の有機的なデザインのソファ。
④イタリアを代表する老舗ブランドMinotti(ミノッティ)
また昨今の社会のSDGsの流れに対し、各ブランドがどのような立場でどう捉え、解決策を見出そうとしているか、興味深い回答が数多く見られました。別の企業と協働で開発して家具に応用したリサイクルプラスチック、水を使わないでプリントされた生地、生産する際に無駄な素材が出ないよう工夫された工程など。
もう「○○のインテリアのデザインが素敵だから買う」時代から、「○○がこういうことを社会のために発信していて共感する=○○を選ぶ」というふうに、エンドユーザーにも「ブランドの本質を意識して見極め選ぶ力」を問われる時が来ているのかもしれません。
⑤サローネを牽引してきたイタリアブランドKartell(カルテル)は、リサイクルプラスチックを積極的に多用。
⑥イタリア発のMontbel(モンベル)は森林伐採計画に基づいて材料を管理。
日本人の活躍も目覚ましく、若手デザイナーの登竜門であるサテライト館(サローネサテリテ)では日本のデザインラボHONOKAが大賞を獲得。使い終えた畳や廃棄される畳の原料(い草)を用いて新素材を独自に開発し、3Dプリント技術を使って家具を制作した、「TATAMI ReFAB PROJECT」が評価されました。
⑦新人デザイナーの登竜門、サテライト館(サローネサテリテ)
⑧HONOKAによる“TATAMI ReFAB PROJECT”の照明。
⑨サローネサテリテ・アワードで大賞に輝いた日本のデザインラボ HONOKA。
デザインとは見た目が美しいだけでなく、身近にあるとワクワクするもの、さらに日常生活がより豊かで快適になるもの、という生活のアップグレードであることを再認識するきっかけになった今年のサローネでした。
写真提供/Alessandro Russotti(①④)、Andrea Mariani(⑤)、Ruggiero Scardigno(②③⑥)、Ludovica Mangini(⑦⑨)、Honoka Lab(⑧)
文・写真/
西村 清佳 Sayaka Nishimura
@sayakina_italy