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日本人が頂点に! 施主と共に表彰される
デダロ・ミノッセ国際建築賞

タリア北東の街ヴィチェンツァで隔年で開催されてきたデダロ・ミノッセ国際建築賞は、今年で12回目となり記念すべき25周年を迎えました。「素晴らしい建築の実現には素晴らしい施主が存在する」ということに焦点を当てて、建築家だけでなく施主も共に表彰される世界でも類を見ない珍しい建築賞です。

授賞式で壇上に上る芦澤氏および審査員一同。

回輝かしい頂点のグランプリに選ばれたのは、ASJ登録建築家でもある芦澤竜一氏による、アメリカのペンシルバニア州ハリスバークに竣工した研究所プロジェクト「SWALES」でした。施主は日本の国内外に多数の拠点を持つ電子機器メーカーで、同施主のプロジェクトで芦澤氏は2017年にもマレーシアの工場で同賞の特別賞を受賞しています。
 施主の建築家に対するリクエストは明確で、「日本人の持つハーモニーの感性を創出し、地元のネイティブアメリカンの未来に対するオマージュを表現してほしい」というものでした。それに対し芦澤氏は、過去と未来、人と自然、日本とアメリカの対話を生み出します。プロジェクトは乾燥した大地に雨水を浸透させ、時間をかけて森林を再生させることを目指しました。敷地は元々豊かな森林でしたが、土地開発されて樹木はほぼ伐採され乾燥しきっていたのです。
 現代社会は合理性を追求することが普遍的であるのに対し、ネイティブアメリカンは7世代先を想像する精神が未来をつくると考えるそう。それは文明の持続可能な方法であり、知恵でもあり、その意志を継承する計画によって大地を再生させようとしました。

グランプリを受賞した芦澤氏の作品「SWALES 

40歳未満の若手建築家に与えられるアンダー40のカテゴリーを受賞したのはヴェトナムの建築事務所ODDO architectsによるハノイの多世代同居型の長屋住宅「CH HOUSE」。地階は社会とのコミュニティーと密接しつつ上階ではプライバシーが保たれる工夫がされています。

アンダー40国際建築賞を受賞したハノイの「CH HOUSE

タリア人建築家に限定して授与される賞は、イタリア中部エミリアロマーニャの旧工場跡を多機能商業施設に再生したプロジェクト「Ex Of f icine Reggiane」で建築家アンドレア・オリーヴァが受賞。40歳以下のイタリア人建築家では雪深い北の山岳部に竣工した個人住宅「CASA G」が受賞しました。

イタリア人建築賞を受賞した「Ex Officine Reggiane

本人で今回、壇上で表彰されたのは他に田中義彰氏(ASJ登録)と吉良森子氏(オランダ在住)。田中氏は名古屋に竣工したクリニックで、吉良氏はオランダのグローニンゲンの集合住宅プロジェクトで、それぞれ審査員賞を受賞しました。
 コロナ禍を挟んで3年ぶりに開催された今回は審査員に新たに隈研吾氏を迎え、前回の40カ国を大幅に上回る60カ国から250を超える作品が集まりました。受賞者たちの今後ますますの世界的な活躍が期待されます。

審査員賞を受賞した田中義彰氏の「たけなか外科内科こどもクリニック」

審査員賞を受賞した、吉良森子氏によるオランダの集合住宅

写真/プレス資料

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
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