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建築家と発注者が共に称えられる
デダロ・ミノッセ国際建築賞

タリア北東部の街ヴィチェンツァにて隔年で開催されるデダロ・ミノッセ国際建築賞は、今回で13回目。世界中から約400件の応募があり、一次審査で70件が選ばれ、25件が受賞または特別賞、入選の対象となりました。
 この建築賞は建築家のみならず、クライアントも表彰する点が最大の特徴です。設計者と発注者がどのように対話、協働して成果を生み出すか、建築の裏側のプロセスを重要視し浮き彫りにしています。各国から選ばれた26名の審査員に、今年は早稲田大学の古谷誠章教授が加わり、「応募作品はレベルが高く国際色豊かで、実に多様性のある建築賞」とコメントしています。

世界遺産オリンピコ劇場での授賞式。

審査員に加わった古谷教授から賞を授与。

佳作に選出された前田圭介氏とクライアント。

賞式が行われるのは、イタリアで建築の父と呼ばれるアンドレア・パッラーディオの設計によるオリンピコ劇場で、受賞者展覧会が開かれるバシリカ・パッラディアーナと併せて世界遺産に登録されています。
 主催のブルーノ・ガッビアーニ会長は、授賞式で次のように述べています。「優れた建築には優れた発注者が不可欠です。本賞は、発注者と建築家、施工者、行政、そして日々の利用者までを含む〝建築プロセス〟を可視化します」。

ALA財団賞を受賞した「Narrow House」

5つの受賞作は、サウジアラビア、コロンビア、イタリア、アメリカなど多彩な背景を持つプロジェクトが選ばれました。
 大賞には、ローマに拠点を持つ建築事務所SchiattarellaAssociatiによるサウジアラビアのプロジェクト「Diriyah Art Futures」が選ばれました。これはリヤド近郊のディリヤに2024年に開設された、中東及び北アフリカ地域初のデジタルアートの拠点です。40歳以下の若手建築家に授与されるUnder40国際賞は、コロンビアの建築事務所Deb Architecture and El Equipo Mazzantiによる自然公園「Ecoparque Ciénaga de Mallorquín」が受賞しました。
 イタリア国内のプロジェクトに授与されるALA財団賞は、イタリア人LorenzoGuzziniによる住宅「Narrow House」が受賞しました。

大賞に輝いたサウジアラビアの「Diriyah Art Futures」

Under40国際賞はコロンビアの「Ecoparque Ciénaga de Mallorquín」

佳作の前田圭介氏の「santo」

本からは、17年前に同建築賞のUnder40国際賞に輝いた前田圭介氏(ASJ登録建築家)がヴィチェンツァ商工会の佳作に選ばれ、壇上に上がりました。入選作「santo」は広島県福山市の港町・鞆の浦に位置し、地域に古くから伝わる鍛造技術を広く知ってもらうことを目的とした、金属加工製造のオープンファクトリー兼ショップです。前田氏は17年前の受賞時から今も変わらずに、クライアントと対峙し続ける姿勢で、ローカルにこだわることで、建築にある種の普遍性を持たせることを意識しています。
 今回の応募作品の特徴は、国や世代、文化がより多様化し、審査は持続可能性と地域への還元性が重要視されました。審査の総指揮を取るマルチェッラ・ガッビアーニ氏は、「発注者と建築家の対話が建築の未来を拓くのです」と総括しています。

展覧会オープニングパーティーで受賞した建築家たちと交流。

展覧会に配置された木は終了後に市に寄贈予定。

写真/プレス資料

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
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