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ライフスタイルの潮流にフォーカスした見本市HOMI

 毎年ミラノで開かれているHOMI(ホーミは、ミラノサローネと違ってほぼ一般客がいないプロ向けの展示会。現代生活のニーズにマッチしたオブジェや什器など、インテリアの主に装飾に特化した見本市です。今年は時期を1月から3月に移行してスペシャルエディションと銘打って開催され、352ブランド、うち40%が海外27カ国から出展し、好評のうちに閉幕しました。

  場内ではトレンドについてのさまざまなトークイベントも繰り広げられ、室内の生活にフォーカスした視点から今年も世界中のブランドが多くの製品、アイデア、提案を発表しました。
 幅広いプロダクトの展示に加え、 HOMIのコミュニティが関心を寄せる主要なテーマについて、それぞれの分野の機関や専門家を招いてテーブルトークやワークショップ、講演会が行われ、多様なプログラムが展開されました。これらの体験を通して得られる情報は非常に好評で、イベントの付加価値を高めるだけでなく、来場者と専門家が意見交換する絶好の機会にもなりました。
 

HOMI展示会場の様子。 

  022年のトレンドは「創造性」「職人芸」とともに、「色彩」が主役でした。陽気で夏の雰囲気を思わせる明るいトーンから、自然からインスピレーションを得た柔らかいニュアンスカラーまで、さまざまなカラーが各ブランドから展開されました。

 例えばラファエル・ガリオットがBlimplus(ブリムプラスのためにデザインしたキッチングッズのコレクション、Cookut(クケットのスチールと木を組み合わせたパステルカラーの鍋、Chez-Moi(シェモアが提案する中間色のリネンのテキスタイルなどがその代表的な例です。
 イタリアの陶器メーカーRebirth(リバースのユニークな植木鉢、Casafina(カーサフィーナが提案するポルトガル人職人による陶器、ミラノのデザイン陶器専門店MV% Ceramics Design(セラミックスデザインのハンドメイド製品など、色彩豊かな陶器もこの展覧会の主題のひとつです。

Blimplusのキッチングッズ。

Cookutのパステルカラーの鍋。

Chez-Moiのアースカラーのリネン。

Rebirthのユニークな植木鉢。

Casafinaが提案するポルトガル製コレクション。 

MV% Ceramics Designのハンドメイドの陶器。 

ザイン性よりも素材に着目したブランドも注目を集めています。ドイツのRemember(リメンバーによるデザインと機能性にも優れた色とりどりのチェアやスツール、そしてイタリアのMojito Design(モヒートデザインによるカラフルな屋内外テーブルセットは、完全にサステナブルな素材で作られています。デザインブランドが環境に配慮することに対する重要度の高さが伺えます。
 実際、このテーマへの焦点はこれまで以上に明確で、リサイクル素材の興味深い使い方や環境への配慮、そしてマウリツィオ・オリコのプロジェクトによるAiTスマートプロダクツの革新的なデジタルデスクなどのプロジェクトも注目すべき作品です。

Rememberの色彩豊かなコレクション。

Mojito Designのカラフルな屋内外テーブルセット。

AiTによるスマートワーク時代に着眼したデジタルデスク。

展示ブースでビジターと直接会話できるのも見本市ならでは。

 プロダクトのパーソナルカスタマイゼーションを旗印にした今年のHOMIでは、より唯一無二のプロジェクトを模索し、流動的で現代社会のニーズに適応した展示が実現されていたように思います。

写真提供/プレス資料

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
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@sayakina_italy