イタリアのロックダウン下で考える
これからのライフスタイル
2020年は、おそらく世界中の人々にとって忘れられない年になったことでしょう。誰もが予想だにしなかった新型ウィルスの脅威の前に、なすすべもなくイタリアは3月から2ヶ月間のロックダウンを強いられることになりました。殆どの産業が止まり、レストランや美術館は閉まり、学校は休校、公園は閉鎖、大人はみんなリモートワークで、ただひたすら粛々と家に篭り続けた2ヶ月間でした。隔離生活の間に垣間見えたイタリア人のライフスタイルを元に、コロナ後の住空間では何が重要視されようになるのか考えてみました。
まず挙げられるのは、イタリアでの食生活は2ヶ月充実していたこと。グルメの国はこのような状況下でも食に手を抜いたりはしません。時間があるのでにわかに手打ちパスタやケーキ、ピザなどに凝り始め、食料品店では小麦粉とイースト菌が品薄になり、SNS上は「今日はこんな料理を作りました」の披露の場となりました。 乾燥パスタや冷凍ピザなども手に入るのに、手作りにこだわるイタリア人たちの食に対する思いが垣間見られます。このことから、「毎日使うキッチンの居心地と家電製品の使い勝手の良さ」が見直されるのではないかと考えられます。そのための広さや採光なども、より入念に検討する必要があるでしょう。
次は「リモートワークのための仕事場の確保」です。イタリアでは殆どの経済活動がストップし、リモートワークを強いられました。どの家にも書斎があるとは限りませんが、できれば「食事するテーブルと仕事する机」は分かれている方が、メリハリもついて作業効率も良いでしょう。椅子も然りで、食事をする椅子と仕事机に向かう椅子では、求められる座り心地も違ってきます。椅子以上に重要なのはリビングのソファで、誰もが長く居られる心地良さを追求したことでしょう。
天気の良い週末も外に出られない生活は閉塞的で気分転換するのが難しい中で、日光浴の大好きなイタリア人たちは、ベランダで新聞を読んでいました。今後はテラスやベランダにデッキチェアとサイドテーブルをあつらえて植木鉢を置くなど、「自宅の屋外で快適に過ごす工夫」が見直されるのではないでしょうか。
イタリアでは5月末現在、段階的に隔離が解除されつつあります。収束に向かっているとは言え今後はどうなるのか予測が難しい中で、この間に気づいた点をこれからの生活に生かせるかどうかが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはならないためのターニングポイントなのではないかと思います。
文・写真/
西村 清佳 Sayaka Nishimura
@sayakina_italy