幻想的な洞窟で授賞式を開催した
バルバラ・カポキン国際建築賞
イタリア北東部の街パドヴァで隔年で行われるバルバラ・カポキン国際建築賞は、街一番の目抜き通りでの展覧会に受賞者講演会、コンサートなど、3日間ほど、街全体のバックアップを受けてのイベントが続きます。
9回目になる今回の大賞は、ウィーンの建築家ユニットFasch&Fuchs.Architektenが、コンペを制してウィーン郊外に設計した小学校「Federal School Aspern」が受賞しました。全面的にガラスを多用した開放的な設計で、地上面から一気にテラスの上へ続く2本のスロープが特徴的なランドスケープを生み出しています。審査員には「今後のオーストリアにおける学校建築のマイルストーンになるであろう」という点で高く評価されました。
また佳作は3名が受賞し、日本からは石上純也氏による那須の「ボタニカルガーデン アートビオトープ水庭」が選出されました。豊かな自然に恵まれた那須の山麓にあるアートビオトープは、アートの制作創造活動に集中できるように計画されたレジデンスです。水庭はその敷地に隣接し、自然と寄り添い、折り合いをつけながら変化し、生み出されていく庭で、時間の経過とともに変化し、日頃の喧騒を離れて心身のあるべき姿を取り戻す場所として計画されました。
佳作を受賞した建築家で、注目されるのはヴェトナム出身のH&P Architectsです。受賞したハノイの住宅作品「Brick Cave」のみならず、他にも審査員の選ぶベストワークに住宅や公共施設が3作品も選ばれるなど、今後の活躍が期待されます。
パドヴァ周辺に竣工した作品に授与されるヴェネト州賞は、パドヴァからも近い元石切場の洞窟を、イギリスの建築家デヴィッド・チッパーフィールド卿が再生して話題を集めた「アルカリ採石場」が受賞し、今回の授賞式イベントはここで開催されました。まるで神殿のような迫力ある石造りの空間に透き通る水が張られたとても幻想的な空間で、音響効果も素晴らしく、石切場のオーナーの話によれば、普段は非公開でもツアー見学の希望に応じて公開したり、コンサートやパーティーなどのイベント会場として貸し出しているとのことです。
イタリア人建築家に限定した賞は、イタリア中部エミリアロマーニャ州の5か所で竣工した、建築家のマリオ・クチネッラによる多機能文化施設が受賞。NPO団体が地元の文化活動を盛り上げるべく計画・依頼したもので、音楽ホール、ダンススクール、レクリエーションセンターなど、それぞれ特徴のある小さなパビリオン形式で建てられました。
40歳未満のイタリア人建築家では2人組の建築ユニット、アモーレ・カンピオーネ・アーキテクツによる住宅「CRS」が受賞しました。依頼したのはシチリアの弁護士で、直線的かつコンテンポラリーな白い外観がシチリアの青い空に浮かび上がっています。
⑦街の目抜き通りで行われる受賞者展覧会。
日本からも今回も多くの応募があった中で、小堀哲夫氏による「NICCAイノベーションセンター」が特別賞を受賞しました。すだれのような繊細な外観と、内部の開放的なオープンスペースが特徴的です。他にも岡田哲史氏の「The Gallery U」、五十嵐淳氏の「Repository」が入選、今後ますますの活躍が期待されます。
写真/プレス資料(①④⑤⑥)、西村清佳(②③⑦)
文・写真/
西村 清佳 Sayaka Nishimura
@sayakina_italy