クライアントが表彰式の主役になれる
デダロ・ミノッセ国際建築賞
イタリア北東の街ヴィチェンツァでは、隔年でユニークな国際建築賞が開催されています。建築賞と言えば一般的には建築家が自らの作品を応募し、プレゼンテーションするのが常ですが、このデダロ・ミノッセ建築賞は「素晴らしい建築には素晴らしいクライアントが存在する」ということに焦点を当ています。
この建築賞は今回で11回目を迎え、世界40カ国から250を超える作品が集まりました。表彰式は世界遺産として知られるオリンピコ劇場にて行われます。選ばれた建築家とクライアントだけが呼ばれる特別な舞台です。それと同時に、ヴィチェンツァの一番の見所でもあるバシリカータにて受賞作品の展覧会が開かれます。まさに街をあげての一大イベントの様相です。
今回のグランプリに輝いたのは、イスラエルの戦没者メモリアル「Mount Herzl National Memorial」、イスラエル政府の依頼を受けた建築家Kimmel Eshkolot Architectsによる作品です。戦没者の墓地の山肌に建てられたメモリアルホールには一つ一つレンガに戦没者の名前が刻まれ、かすかにずれた隙間から漏れる光が生に対する希望を暗示しているかのようです。
40歳未満の若手建築家に与えられるアンダー40国際建築賞を受賞したのは、ブラジルのサンパウロの住宅「Casa Biblioteca(Library House)」、政治家Joào Carlosが若い2人組の建築ユニットAtelier Branco Arquiteturaに依頼した作品です。政治史研究の第一人者としても知られるクライアントは、都会の喧騒から離れられる隠れ家と、静かに研究に没頭できる書斎を求めていました。そこで建築家に最初に依頼したのは、自然に埋もれた書斎のイメージと、そこが瞑想にふけるのに相応しい場であるということでした。深い緑に囲まれた山の斜面に建てられたガラス張りの書斎はとても開放的で、高い天井から木漏れ日が柔らかく差し込み、木々の影を落としています。
イタリア人建築家に限定した賞は、イタリア中部エミリアロマーニャ州の5か所で竣工した、建築家のマリオ・クチネッラによる多機能文化施設が受賞。NPO団体が地元の文化活動を盛り上げるべく計画・依頼したもので、音楽ホール、ダンススクール、レクリエーションセンターなど、それぞれ特徴のある小さなパビリオン形式で建てられました。
40歳未満のイタリア人建築家では2人組の建築ユニット、アモーレ・カンピオーネ・アーキテクツによる住宅「CRS」が受賞しました。依頼したのはシチリアの弁護士で、直線的かつコンテンポラリーな白い外観がシチリアの青い空に浮かび上がっています。
日本からも今回も多くの応募があった中で、小堀哲夫氏による「NICCAイノベーションセンター」が特別賞を受賞しました。すだれのような繊細な外観と、内部の開放的なオープンスペースが特徴的です。他にも岡田哲史氏の「The Gallery U」、五十嵐淳氏の「Repository」が入選、今後ますますの活躍が期待されます。
写真/プレス資料
文・写真/
西村 清佳 Sayaka Nishimura
@sayakina_italy