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ヴィンテージ家具と共にあるイタリアの暮らし

イタリアで一般的な家庭にお邪魔すると、インテリアの選び方にそれぞれの家のデザイン志向を見ることができます。モダンなインテリアで統一している家、代々受け継がれてきたようなヴィンテージ家具を置いている家、そしてモダンな雰囲気の中にヴィンテージ家具がマッチしている家まで。この3番目のタイプがイタリアで最も目にするパターンのように思われます。このヴィンテージ家具の探し方や、現代の家庭での使い方を紹介したいと思います。

タリアの家庭にあるヴィンテージ家具の出どころとして、一番シンプルなのは親や親族から譲り受けた場合でしょう。それは年月を経て風合いが増し、多少の傷も味わいの一部となって、まるで家の生き証人のようです。新しい世代も家を引っ越す際には、家具を新しく揃える前にまず家の倉庫にどんな家具が眠っているのかを見て、使えるものを優先して選んでから足りないものを買い揃えていきます。

レストランもテーブルと椅子をヴィンテージにして統一感を。

当にレトロな雰囲気が好きな人なら、買うときにこだわってヴィンテージを探すでしょう。そんな人にイタリアでうってつけなのは、週末の骨董市です。街によって規模や周期はまちまちですが、大概どこの街でも探せば毎月どこかで骨董市が開かれています。骨董市というのはどんな掘り出し物があるのか、行ってみるまで分からないというワクワク感が醍醐味です。まず頭の中で「こんなものがあったらいいな」というイメージを描いておいて、見つかったら値段を聞いてみて、高いと思ったら交渉もできます。それでも迷う場合には、妥協することなく潔く諦めることも肝心。そうして巡り会えたヴィンテージは、感慨もひとしおです。

ミラノにあるミッドセンチュリーを扱うビンテージショップ。
郊外の骨董市で垣間見えるイタリアのカントリーライフ。

ィンテージが欲しくて、探しているもののイメージがはっきりしている場合には骨董市で運試しするよりも、ヴィンテージ専門のショップに行った方が早いでしょう。行った時は在庫になかったとしても、例えば「XXX年にデザインされたXXというモデルの椅子を探している」と伝えておけば、入荷した時に連絡してもらうこともできます。

イタリア人夫婦( 70代)の落ち着いた自宅のリビング。
イタリア人建築家( 40代)は 50年代の家とインテリアの年代を合わせて。

うして手に入れたヴィンテージも、そのままでは使い勝手が悪かったり、既にある他の家具と相性が難しいこともあるかもしれません。そんな時は、例えば木製椅子は座面をモダンな柄に張り替えたり、机は天板を張り替えたり、棚は上からペンキで色を塗り替えるなどして、自分の好みに生まれ変わらせることもできます。イタリアの人たちは、こうして一工夫することでまだまだ使える家具たちに新しい息吹を与えるのが、本当に上手です。

イタリア人デザイナー( 30代)のポップなヴィンテージ家具。
ミラノにあるセレクトインテリアショップ。
椅子やソファを張り替えるための布サンプル。

ヴィンテージの家具には、長年使い込まれてきた素材感と、独特の存在感があります。それは住んでいる人たちの記憶や思い出も吸い取って、あたかも家の一部になっていくかのようです。そんな風に日常生活を豊かな気持ちにしてくれるヴィンテージ家具は、愛着を持って大切に使っていきたいものです。 

写真/西村 清佳

文・写真/

西村 清佳 Sayaka Nishimura

東京芸術大学大学院建築理論修了後、イタリア政府給費留学生として渡伊、現在トリノ在住。イベントコーディネーターとして日系企業や日本人デザイナーの見本市や展覧会をサポート、及び取材記事を執筆。私生活では1900年代建造の工場跡の1コマを購入してマイホームにリノベーションし、インスタグラムで工事の経過やイタリアのインテリアの最新トレンドを発信。
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@sayakina_italy